ヒューストン、ヒューストン、聞えるか?『ゼロ・グラビティ』
- アーティスト: スティーブン・プライス
- 出版社/メーカー: Rambling RECORDS
- 発売日: 2013/12/11
- メディア: CD
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全然関係ないけどクラークの『メイルシュトローム2』は事故で宇宙空間に放り出された男一匹が色々あって地球に帰る話しなので、これが『ゼロ・グラビティ』の系譜につらなるともいえなくもない。
全く関連性ないけれどコナミの小島秀夫作品の『ポリスノーツ』は宇宙空間に放り出されて25年後に救出された男が謎の陰謀劇に巻き込まれて宇宙ステーションに赴く話しなので「ヒーローもの」の系譜を辿りつつ『ゼロ・グラビティ』の先をいっている。
それはともかく、疲労が溜まるし、外は異常に寒いし、金はないしで、なかなかに外出しにくくなっていたんであるが、このままでは上映が終わりそうなので暇をみつけて『ゼロ・グラビティ』を観に行ったのでした。
3Dは既に終わってた。
僕はSF好きの端っこに位置するが、SF好きにとって宇宙とは永遠のテーマである。地球のことしか考えてなさそうなウイリアム・ギブスンでさえ、デビュー作では宇宙に行ってしまうのだ。というかSF者でなくともなぜか、みんな宇宙に惹かれてしまう。新スタトレに「宇宙、それは最後のフロンティア」って科白があるけれど、しかし新しいフロンティアという動機以上に宇宙にはひとを駆り立てるなにかがある。
けれど宇宙はそんな人間の羨望の眼差しなど歯牙にもかけない。
『ゼロ・グラビティ』冒頭、映画が始まった直後に黒字に白文字で人間がどれだけ宇宙に向いていないか、デカデカとスクリーンに表示される。
地球の上空60万メートル
温度は摂氏125度からマイナス100度の間で変動する
音を伝えるものは何もない
気圧もない
酸素もない
宇宙で生命は存在できない
こうした宇宙空間の状況下のなか、サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが船外作業中、ロシアの廃棄した衛星がデブリと化して彼らを襲う。サンブロとジョークルはたったふたりで宇宙に放り出される。乗っていたシャトルはデブリで大破。
地球に帰りつく手段は見当たらない。とか言っても死ぬわけにもいかないので、NASA時代に取得した感情を飼いならす手段とサバイバル術、宇宙と科学の知識を駆使してなんとか地球への帰還を試みる。
とにかくあらゆる展開で、え、無理だろ? みたいな感じを醸しだしながら映画は進む。
上記した宇宙の環境全てが障害となって地球に帰りつこうとするサンブロを阻むからだ。
同時に虚無とも広大ともいいようのない宇宙空間はあらゆるものを遊泳中のサンブロから引きだしていく。
死、生、過去、未来、記憶、夢、そして地球の家。
正直、僕にはこの映画に対する語彙が足りない。この映画には色々なものが詰まっている。
監督のアルフォンソ・キュアロンは『トゥモロー・ワールド』で2時間の尺に膨大な情報と人間の感情を詰め込んだ。
『ゼロ・グラビティ』も例外ではない。
友人はこの映画を「『アルマゲドン』だな」と評したが、けだし名言である。
この映画は表層は『アルマゲドン』的要素に溢れているのだが、指向している方向は全く違うのだ。
ところで撮影技術の最先端っぷりが取りざたされているが、僕的には音楽が気に入りました。ナイス。スティーブン・プライスの履歴はちょい謎なのだが、イギリスのポストパンクバンド『ギャング・オブ・フォー』のアンディ・ギルのスタジオでキャリアをスタートさせた彼らしく『ゼロ・グラビティ』は宇宙空間を演出する為にエレクトロミュージックを多用している(ギャング・オブ・フォーはリフと思想バンバンの歌詞がメインだけど)。
しかしてえげれすのポストパンクスタジオがスタート地点らしく、エレクトロといってもノイズ、サンプリング、不協和音を盛大に盛り込んでいる為、正確にはゴス、インダストリアルと表現した方が適切だろう。反資本ロックである。
人間が生き残る手段として最新資本技術が必要な宇宙空間を表現する為に、最新音楽機器を多用した反資本ロックがベースになっているのだ。
音楽が流れる度にニヤニヤしてしまいましたよ。
いいチョイスである。
そういやキャスリン・ビグローも『ハート・ロッカー』で反ブッシュのインダストリアル流してたし、フィンチャーはインダストリアルのNINのトレントと作業するのが気に入っているみたいだし、インダストリアル時代来てますか?
劇中、ジョージ・クルーニーがサンドラ・ブロックに説教する。これがなかなかに観ていてこたえた。
「安全な自分の世界に閉じこもることなく残酷な世界と向き合え」とテンプレな説教をかましてくる。
普通のおっさんに説教されるんならムカつくだけだがジョージ・クルーニーである。
現実からやや逃げ気味で「逃げちゃダメだ」とか自分に言い聞かせてノイローゼ気味のあなた。その必要はないわ。
劇場でジョージ・クルーニーの説教を聴きない。え? もう二月なの? 上映終わり?
帰りに「かつや」に寄ってカツ丼の竹を食したのだが、このカツ丼のようにずっしりと重く、しかしきれいに完食できる映画でした。
松ではもの足りず、梅では多過ぎる。竹で満腹になりつつも、残すことなく満足できる、そんな90分の尺でした。
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