青春コミック/第一期感想文

ネットで漫画読みのおじさんたちがやたらと『アオハル』って雑誌を推してる! なんだかちょっとエッチっぽいし、マニアックそうだし、面白そう! え? アオハルコミック一期が先月出たの? でも全部で六冊もあるし、ボク、お金そんなに持ってないし、マンガにも詳しくないからどれ読んでいいのか分かんないようぅ……ふぇぇぇぇ……。という駆逐艦時雨が居れば助けてあげるのだが、残念だがそういう悲鳴をあげているのはおじさんか、おばさん、あるいはそれらになろうとしている大学生、社会人! 残念! それはともかくなんか色々あって全部買っちゃったから俺が全部レビューしてやる! 参考になるかどうか知らないけど! 

ちなみに紹介順序に特に意味はなく、単にざっと並べただけで、面白い順とか、アンソロジーみたいに「まずはこの一冊でブログ読者の心を掴んで次に手を緩め、その次に油断させたところで圧倒的な作品でビビらせ、最後に大物を持ってきてアッといわせてやるぜ!」みたいな編集方針ではなく、本当に意味もなく並べただけなので、間違ってエゴサでこの零細ブログに辿りついてしまったアオハル編集者、作者の方々は怯えたりかんぐったり、深読みする必要はないです。

「オタクはかくあるべし!」という出所が不明な信念の元に(たぶん、大学のオタク先輩あたりが原因)、少年ジャンプやサンデー、アフタヌーン等を購読する傍ら、ハヤカワや東京創元は当たり前、柳田國男やら折口信夫やら種村季弘やら講談社学術文庫やらちくま文庫やらを読み漁り、しかしそれでもまだ足りずに光人社NF文庫や原書房やらにも手を染めてしまい、かといってそれらの知識は現実世界では全く役に立たないので無駄に腹に溜めたオタク力をもてあましてしまったので、ヘタにスタイルのいい貧乳よりはちょっとぽちゃってる巨乳でメガネの女の子にそのやり場のない怒りを受けとめて欲しい、というあなた! 山田穣の『昔話のできるまで』がぴったりですよ! 
こう書くとオヤジ向けっぽいが、まあ、オヤジっていうよりはオトコノコ全般向けですよね。
日本神話からミリタリ、オタクな知識までごった煮にした世界で少女や乳眼鏡、さえない少年やオヤジが大活躍。史実や神話、ミリタリに基づいた知識をこねくりまわしてどこからが本当でどこからが妄想なのかよく分からないオタクな感覚がよろしい。本当にオタクが描いた漫画なので、オタク苦手ってひとは苦手かもね。オタクは大好きになると思うよ。仲間が描いてるんだから、
ちなみに僕は『まほうつかいと少年』という掌編が気に入っていて、8Pながらになかなかオツな「これぞ短編!」ってテイスト。けいおん!』や『たまこま』といった日常系を愛するあまり、それらを「箱庭」だの「成長がない」だのの一言で軽視してしまう連中が赦せず、そういった不届き者には「『日常』という言葉を軽々しく使うんじゃねえ!」と噛みついて作品を守ってんだか、ファンを遠ざけてんだがよく分からないあなた! 位置原光Zの『アナーキー・イン・ザ・JK』を読んで落ち着いて下さい! 
一癖も二癖もある女子高生達が繰り広げるシモネタありの日常系!
けいおん!』鑑賞時のように笑顔で彼女達を見守るもよし、彼女達の他愛のない言動に意味を見つけ出して言葉遊びをするもよし。
勿論、学生時代や、そんなにオタクじゃなかった頃にたまたま『けいおん!』に出会ってしまい、あの頃が忘れられないあなたも是非。あの瞬間が帰ってきますよ。
現在進行形で『ゆゆ式』『ゆるゆり』なんかを楽しんでいるあなたもどうぞ。
レストー夫人 (ヤングジャンプコミックス)

レストー夫人 (ヤングジャンプコミックス)

理智的なものを求めヨーロッパ等の海外文学に手を伸ばすも、意外とやつらの俗物っぷりとスノッブ振りが鼻もちならず「もう二度と読まんわ」と見切りを付け、女性の繊細な知性に救いを求めて吉屋信子須賀敦子中野翠森茉莉といった百合や幻想、耽美性の強いものを経由してとうとう今野緒雪の『マリみて』に出会い百合クラスタになってしまったあなた。三島芳治の『レストー夫人』を雨けぶる日曜の午後に読んで百合百合しくも思春期特有の仄暗く快い時間を堪能して下さい。 
海外幻想文学のような理智的で理不尽で、退廃的なムードのなか、謎の志野お姉さまとその周囲の少女達が演劇「レストー夫人」を軸に繰り広げる少し奇妙な放課後世界。百合クラスタは外しちゃいけないと私は思うの。是非、あなたにも読んで欲しいわ。理性と幻想がせめぎ合うほんのちょっぴり贅沢な時間を過ごして頂きたいわね。
あら。そうそう。伊藤計劃の『ハーモニー』にとり付かれたハーモニーおじさん、遠慮なさらずにご一緒に『レストー夫人』を読みましょう。これこそ、伊藤計劃以後だというのは、ごめんなさい。一寸品のない、おじさんみたいな修辞の使い方よね。
後は貴方の御想像にお任せしますね。それよりも『マリみて』や『百合姫』を御学友に隠れながら読んでいるあなたこそ、『レストー夫人』に相応しい読者だと私は思うの。いえ、恐らく『レストー夫人』が貴方を選んで、貴方の為に、描かれた作品、だなんて思うのは傲慢かしら。幼くしてダメ大人達、ダメ友人達に絶望してしまい、以後は一人で書籍や音楽、映画といった芸術一般を心の支えに生きてきた結果、膨大な知識と無垢な心を持つ代償としてコミュ障になってしまったサイモン&ガーファンクルの歌のようなあなた! 
今日マチ子の『ヒカリとツエのうた』に隠された寓話や折り込まれた風俗、土俗、自然を堪能してください。
そして、あなたが心のどこかで求めている理解者、伴侶をこの本の中に見出して下さい。
ここには心地よい音や暖かくていい言葉、それに反して厳しい自然と動物の躯、幻滅するような人間の現実、しかし最後には人間賛歌が待っているのです。
あー、ごめん、俺こういうのあんまり最近向いてない。感想言うの難しい。ちょっと百合テイストもあります。
黒―kuro― 1 (ヤングジャンプコミックス)

黒―kuro― 1 (ヤングジャンプコミックス)

ヨーロッパのゴシック趣味を基調にしたファンタジー世界を繊細な絵柄で描かれた少女達が駆け巡る。
とかいうと聞えはいいけど、はっきり言うわ。ロリコン変態だわー。ロリコン属性があって変態の俺が言うんだから間違いないわー。ゴスロリ着た女の子が意図的に股間開いてたり(あぐらかくとかね)、襟元見せる構図がとにかく豊富。
上からの構図、下から覗くようなアングルとか、いわゆる「変態お兄ちゃんが女の子を見ている視線」的なものが多いんですわ。
あと、あれだよ。お注射? お注射される女の子が嫌がってる絵とかあんのよ。まあ、必要っちゃ必要だけど、なにもあんな見せ方しなくてもいいじゃん……。
ヒロインのココはゴスロリ黒髪ツインテリボンだし。アレだ。アマゾンのレビューでは当たり障りのない事言ってるけど、どうして売り切れで、一番人気があるかっていうとゴスロリだからだわ。隠してもしょうがないからおじさんは言うわ。コミック『LO』とかでレイプされている女の子に疲れちゃった一周しちゃったロリコンの為の漫画だわ。あー、だからね。少女趣味にかけてはこの漫画、異常な出来栄えですよ。『苺ましまろ』『ガンスリンガー・ガール』といった「少女」というよりは「幼女」が活躍する漫画に反応しちゃってるひと! 特に海外の幼女! ソウマトウの『黒-Kuro-』ですよ! 
一応、百合なんだけど、百合っていうよりはロリ。この作品が一番まとも。そういう意味でもコミック『アオハル』の懐の深さというか方向性を示している作品でもある。ストーリーは要約すると難病の少女を救うために集まった、落ちぶれた役者、妻を失った父親、患者を救えない事にコンプレックスを抱いている若い医師が、治療を通して逆に無垢な少女のイマジネーションに救われる話。
なんかすげえまともでしょ? まともだからデキのいい尺が二時間くらいの映画を観てる感覚に近いです。幻想風味もありの、イマジネーションありの、虚実入り乱れた人間ドラマありの、っていう、『バロン』とか『フッシャー・キング』あたり撮ってたテリー・ギリアム連想しました。
悲惨な現実より、人間の豊かなイマジネーションのほうが絶対に強いっていうんですか。
オカシイ漫画ばっかり読んで「日本の漫画最高!」って叫んで引かれてる人はたまにはこういうの読んでみるのも吉です。