『戦国コレクション』の食事に見る物語の面白さ。その弐。

戦国コレクションアニメ食事感想

戦国コレクション Vol.01 [Blu-ray]

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目をとじてギュッしよ

目をとじてギュッしよ

僕の周囲でにわかに戦国コレクションが熱い。といっても一部だけなんだけれど。
つーわけで前々回に引き続き、戦コレのレビューです。
いや、全話レビューとかいっぺんやりたかったんすよ。
「ぱっしょん様」
http://d.hatena.ne.jp/tanami/
が「てーきゅう」全話レビューやったり。
かてぽんさんところの「かて日記」
http://kate555.blog59.fc2.com/
でも戦コレレビュー全話やってるでしょ。つーか、この記事書く時は「かて日記」で復習してるんですよ。すいません。
「かて日記」のレビューは考察もすごいので戦コレファンなら是非観て欲しいサイトだ

なんかこういう映画雑誌の「007全作レビュー」とか「寅さん全作レビュー」的なものに憧れてたんですよね。

引き続き、「食事」と「日常」という観点でいきます。手が届いたら元ネタもやる。1クールと区切りがいい、十三話まで八話分一気にやるよ。長くなります

  • 六話。平賀源内EP
  • 食事シーン

ウナギが大好物で「土用の日を作った人は天才だな〜」と呟くのは土用の日を作ったのは平賀源内本人だから
ちなみに食事は近所の少年が運んでくるところから自炊する能力はない模様。それはちくわも碌に焼けないシーンからも判る。
少年の「おばあちゃんが源内に(ウナギを)もってけって」と言っているところから、偏屈な発明家と言っても近所付き合いを欠かさず、周囲からは好感を得ているのが示されている。史実の平賀源内本人も長屋暮らしだった。団地っぽいところに住んでいるのはその名残り。

  • 日常シーン

互いに「夢を追う」というスタンスを少年と共有してはいるものの、少年はタイムマシンを「言い難い名前」とバカにし、源内もサッカーを「玉遊び?」と小馬鹿にする。しかし少年の熱意に反応した源内は怪我をした少年をタイムスリップで助ける。少年も最期には「完成するといいね。ふ、風来山人号」と言えなかった名前をちゃんと最期まで言えるようになる。この瞬間、互いに認め合える関係になっている。風来山人は源内の筆名。
ちなみに源内の財政は「かば焼きを買える金はないが、ちくわを買える金はある」
出入り口の警報装置の役の立たなさから、これまでの発明品は役に立たない模様。だから「タイムマシンで少年を助けるという願いが叶う」のは源内の夢が叶った瞬間

元ネタは多分、バック・トゥ・ザ・フューチャー。タイムマシン風来山人号が故障してしまうところはデロリアン号が故障してしまうところとそっくり。しかしまあ、タイムスリップものって大抵、タイムマシンが壊れるんだが。源内もエメット博士も夢想家の発明家。
まともに会いに来るのは少年(マイケル・J・フォックス演じるマーフィ)のみというところも一緒。

  • 食事シーン。

店にやってくるなり空腹の音を立てる芭蕉に住人は料理を薦め、主人はつっけんどんながらに、カルボナーラを奢る
この時点で芭蕉と周囲の人間関係が決定している。しかし女主人はカルボナーラしか作れない。カルボナーラを食べて反応する芭蕉女主人の心理を芭蕉が見抜くシーンだ。

「あばら家に 降り注ぐ月 変わりなく」

芭蕉は一句詠むが、芭蕉に対する住人の心理と、同時に流れものの芭蕉に親切に接してくれた住人へ対してへの歌にもなっている。
芭蕉不在の後は様々なレシピを扱えるまでに精神的に回復しているが、帰って来た芭蕉は「カルボナーラ」を注文し、「この店は カルボナーラが 世界一」と一句詠む。有名になった店だが芭蕉のスタンスは変わっていない。

  • 日常シーン。

芭蕉の介入によって「前向きに生きる」ことを学んだ住人はそれぞれの道を復帰する。全員復帰である。
喪失していたものの獲得に向かっている。女主人もピアノに触れられもしなかったのに終盤ではピアノに触れるようになっている。過去を克服する道に向かっている。
このへん「カルボナーラ」という過去をそのまま現在まで維持する芭蕉が印象的だ。
芸術は人間性を回復させる潤いの力を持っている。
花に水をやるのは心に潤いを与える心理描写。

元ネタはバグダッド・カフェこのミニシアター映画は、変わった画面の色使いが特色だったけれど、それがこの回の色褪せた色調に受け継がれている。
芭蕉はドイツの旅行者ジャスミン。女主人はブレンダ。僕はこの映画を観た時に「これは熟年女の百合だろう」という印象を受けたのだけれど、百合の戦コレに受け継がれている。給水塔が象徴的に描かれているが「バグダット・カフェ」でも給水塔がシンボルになっている。バグダットカフェにはピアノ奏者、画家、歌って踊る女手品師がいるけど、そのまんまだ。繁盛するのもそのまま。子供がジャスミンに懐くのも芭蕉と同じだ。

教科書レベルで申し訳ないが芭蕉奥の細道」は海に沿っての旅だ。舞台が海岸線なのは恐らくそのため。
でも海辺の家に放浪者が現れてみんなの心を解きほぐすのって高倉健の映画か「裸の大将」でありそうだよね。
で、それを傍で眺めてて面白くない津川雅彦が邪魔すんの。「ホームレスの癖に早く出て行け」って(笑

  • 八話 豊臣秀吉EP
  • 食事シーン、日常シーン、元ネタ。

秀吉の米好きで開始されるこの回は僕もビビった。
以下、思いつく元ネタを列挙する。箱の中の寸劇はインランド・エンパイア地下、覗き穴はシュヴァンマイクルの「アリス」
宴会シーンが分からん。伝説は風の谷のナウシカ。夢問答と砂漠の戦車は「劇場版うる星やつら2」偏光に映る米の姿はエヴァ
階段を昇って安息の地に行くのはジェイコブズ・ラダーラストが夢落ちで、全てが一刹那の出来事なのもジェイコブズ・ラダー他に「マルホラント・ドライブ」「アウル・クリーク橋の一事件」も地獄めぐりの末の夢オチだ。

-食事シーン。
インターネットで世界の構造を知ってしまったしんくはやる気を喪失。純のお母さんが食事を持ってきてくれても喉を通らない
ところが学校に通い始めて総長という倒すべき目標が見つかると大食いになる。
基本、戦コレの連中は大食いであり、調子が悪い時は小食か悲惨な食事、調子がいい時は誰かが一緒に食べてくれて、何杯でもおかわりする。

  • 日常シーン

天才肌のしんく。頭脳派なのはアバン書籍の山に埋もれ、インターネットを使用しているところから判る。
世界の構造を知っただけで天下統一をあきらめてしまうあたりに頭脳派の特徴が表れている。行動派の信長とは真逆の性格だ。
勉強家らしく、万年蒲団。鬱にも陥り易いし、時々妄想を喋る。しかし弱い者いじめは見過ごせない体質なのがバレーボール試合でよくわかる。しかも手加減を知らない性格でもある。周囲にことごとく反抗することから負けず嫌いでもあるし、無意味な集団生活を嫌っている。殺るかやられるかの戦国時代をそのまま受け継いでいる。一方で自分に二つ名をくれた純によくつくすシーンから義理堅いことが明示されている。それがそのまま今川家の復興につながっていく。

元ネタは学園番長ものの集大成だ。「総長」「仮面の敵」「強敵(とも)はライバル」「炎の異能力と水の異能力の相克」「真剣勝負」「煽りっぱなしの次回予告」「華」。映像的には日本の格闘漫画をリスペクトした少林サッカー」「勝ちこみ!タイガーゲート」「火山高」「マトリックスあたりだろう。

  • 食事シーン。

一回しかない。松永がワインを傾け、お嬢様が固唾を呑んで話を聴いている。
松永にとっては「酒を飲みながら会話をする程度の話」でありお嬢様にとっては「酒を飲みながらなんてとんでもない話」だ。

  • 日常シーン。

松永久秀史実では信長を何度も裏切っている策士。その際、信長の欲しがっていた「平蜘蛛茶釜」を譲り渡すので容赦して欲しい旨を訴えているが、松永のおっぱいには蜘蛛のタトゥーが。だけれど、結局、松永は「平蜘蛛茶釜」を最期まで信長に譲らなかった。詐欺師という設定はここからだ。
手段が手慣れていることから詐欺が常套手段になっている。それは冒頭で死んだふりをした後、警官とグルになっているシーンがそのままラストで繰り返されていることからもよくわかる。
冒頭で死亡の偽装工作がうまくいくのはそのままラストへのネタバレになっている。
ノローグでも「こういう場合はこうする」とわざわざ断わりを入れている。
戦コレは観直すと、最初から結構ネタバレしているパターンが多い。ラストを暗示しておきながら視聴者にラストまで魅せてしまう。
これって映像作品ではかなり高度な技術だ。

元ネタは一番近いのはアメリカンニューシネマを商業的に成功させた「スティング」か。「スティング」は車内でのシーンが印象的だけれど、松永回でも車内シーンが多い。博打も死んだ真似も、警官がグルなのも一緒。地下室のメロディーもカジノ泥棒するけれど、あれは最期に本当に死ぬし。
「オーシャンと11人の仲間たち」のリメイクオーシャンズ11も舞台はカジノだ。

  • 食事シーン。

コンビニ。「あのひと、ポテチをまた三袋買っていきますよ」「ホントだ」という会話から、前田の務めるコンビニが地域密着型、寿命が長い、また、このメンバーのローテーションがほぼ一緒というのが推察できる。
つーかこの店は信長がいなりずしを潰したコンビニだ。以後、ATMの引き出しに使ったりと信長は重宝している模様
男性店員はあの主人公(?)だ。
信長は知らず前田と抵触している。あるいは前田は信長に興味がないのか。
前田さんは不良にジュースを頭からかけられても騒がず、ドスを効かせて退散させるあたりに戦国武将の迫力がある。

  • 日常シーン。

店の営業方針は厳しい。営業中の私語、携帯は禁止。強盗や不良が後を絶たない事から治安はよくなさそうだ。
というかこの強盗、一話の強盗だろ……。
不良にビンタをかまし、白の下着を見せて一件落着。ジュースを頭にかけられて睨みかえした時に勝負の結果が視聴者に提示されているからだ。

元ネタはジョン・トラボルタを一躍有名にしたサタデー・ナイト・フィーバー。夜になると有名ダンサーとして崇められるトラボルタと、夜になると謎のライダーとして街を走る傾奇者、花の慶次をかけている。
バイクの名前は「松風」なのでエロゲーでアニメにもなった「真剣にわたしに恋しなさい!」由紀江の「松風」が元ネタ。
由紀江は人形の「松風」と会話ができる。
バイクはアメコミで映画にもなったニコケイ主演のゴーストライダーだ。夜な夜な街を疾走しては復讐の炎に燃える。
眼鏡をかけている時は冴えないが、外すと超人なのは故和田伸二の「超能力少女明日香」だ。髪型も眼鏡もそっくり。

  • 食事シーン。日常シーン。

この回は掛値なしの傑作。日常シーンと食事シーンだけでキャラ描写、ストーリー展開、心理描写、あらゆるものを済ませている。
しかも第一話と構成がほぼ同じだ。十三話という折り返し地点だからだ。

ATMで秀吉からの送金を引き下ろす信長。すっかり現代に慣れている様子。しかし「帰ったら城にATMを設置しよう」とうそぶくところから他のキャラのように帰還を諦めてはいない
アイスを食べようとすると溶けて落ちてしまう。そこへ食べ物に飢えていたアゲハがキャッチ。負けず嫌いな信長と、やはり負けず嫌いなアゲハの押し問答の末、信長が根負けしてハンバーガーを奢る。信長と同じ夢を語るアゲハ
主人公(?)にハンバーガーを奢って貰い、天下統一の夢を語る一話と同じ構成だ。
ここで信長とアゲハは完全に同調している。以後、信長がグダグダいいながらもアゲハに従い、面倒を見るのは自分の鏡を見ているからだ。
アゲハの服が臭いとコインランドリーへ。アゲハはすっぱだかになるが信長は動じない。信長も一話で全く同じ行動をしている。
洗濯機の下をいつものごとくと漁るアゲハ。「絶対なにかある」との宣言通り福引券を発見。放浪生活がかなり長い事が窺える。
ここでアゲハの強運が強調される。信長は運では絶対にアゲハに敵わない
それは杉谷善住坊も全く同じだ。以降、全てのシーンはアゲハの強運で進む。

福引で信長が二等、アゲハが一等を当てて電車で温泉旅行。一話で電車を追い越せと叫んでいた信長だが、遅刻しそうなアゲハに「電車に遅れるぞ!」と叫んでいる。一話の逆転構造だ。
福引の報酬で温泉で湯に浸かり、豪華な食事を食するアゲハと信長。卓球をしたり、翌日には海で海水浴。
一方、杉谷は湯船をうろついていると警官に捕まり、惨めな食事をしながら信長を観察、卓球に夢中になる信長を殺し損じ、海でもアゲハの落とし穴に信長が落ちることで仕留め損なっているが、逆にいえば、全部アゲハの強運で、杉谷が恋しているアゲハの友人である信長を殺さずに済んでいる
見抜いているのか、それとも同種にシンパシーを感じているのか、このままだとグダグダになると思って信長はアゲハの元を去る。自分とまったくおなじ人間のアゲハと一緒に居ると、幸福で済んでしまって、天下統一という厳しい夢を忘れるのを警戒している。
アゲハと光秀を重ねている。恐らく主人公(?)の元を離れているのも同じ理由だろう。
杉谷が信長を殺さないと誓ったのは、信長が命の恩人であるアゲハと同じ人種だからだ。
劇中に信長の家紋が空中に浮かんでいるが、シュールなシーンでも無意味な演出でもない。
信長の家紋には揚羽蝶紋」というものが存在する。

また海では硝子の小物を拾うシーンもあるがこれも一話と同じだ。
一話冒頭で光秀と別れて現代にやってくるシーンと十三話ラストのアゲハとの別れは同調している。

元ネタは冒頭のネカフェの看板が「ジャッカル」ということからしブルース・ウィリス主演「ジャッカル」フォーサイス原作、エドワード・フォックス主演のジャッカルの日のリメイクだ。両者は全然違うけど。「ジャッカル」では暗殺者ジャッカルの目的阻止にIRAのデクランが一時恩赦を受けて、ジャッカルの狙撃阻止に回る。ジャッカルを斃すものの、デクランはまた刑務所へ。しかしFBI副長官の恩義をうけてデクランはひそかに脱出。どこかへと姿を消す。
戦コレの信長が去るのはここに絡んでいるのかもしれない。

話が全然違うけれど、IRAはアイルランド共和軍のこと。PIRAは暫定派
現代ヨーロッパに絡んだ物語には必ずといっていいくらい登場する。ガンスリンガー・ガールの少女達の敵パダーニャというテロリストグループはこのIRAを指す。
マスターキートンでも頻繁にIRAが登場する。

ガンスリンガー・ガールでは舞台がイタリアの為にお酒はビールではなくワインが頻繁に登場する。
ピノッキオが潜伏していたのもワインを作る為のブドウ農園だ。
義体と条件付けの影響で脳障害を起こしたアンジェリカの為に、捜査員一丸となって「パスタ王子」の物語を創作するシーンは感涙ものだ。

マスターキートンでは世界各地に飛ぶキートン美味しいものを食べるためには労力を惜しまない。彼の精神年齢が若く、好奇心旺盛な証拠だ。キートンは特にアイスとケーキに目がないけれど、アイスとケーキはチョコレートなんかと一緒でヨーロッパスイーツの代表格だ。また登場人物の好む食べ物で、キャラの個性や家庭事情人種などのバックボーンを示し、時にはそれが事件解決に繋がる。

以下、次回に続くか判りません。しかし間隔が空いても全話はするつもりでいる。

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